眠る兎
」のレビュー

眠る兎

木原音瀬/車折まゆ

衝撃なデビュー作品

ネタバレ
2022年5月15日
このレビューはネタバレを含みます▼ これがデビュー作品とは…。古い作品なので、仕掛けが過去のものなんですけどね。それすらも今となっては味です。からかいから始まった。しかも、浩一は伊藤が誰かも知ってるのです。狡いけど、若いからこその残酷さと、経験値の低さがひしめきあい、罪悪感や初めてのときめきに心が躍るDKです。こんな事してみようなんて思う遠藤さん。きつい言葉で嗜める柿本くん。それぞれの気持ち、読み手には分かってしまう。浩一が鈍かっただけですね。だから、偽りを知った時。高橋は逃げるしかなかった。相手がどんなふうに思うのか、なんてことすら思い付かないほどの純なDKだったのです。でも。気持ちだけはホンモノだった。高橋が好きだって事。高橋にはとても辛かったと思いました。だから、音楽室で、君をとられたくないと、言葉にした事が出来たのは、本当の気持ち。心からの気持ちだったから。木原先生の作品では、恋や愛のワクワク嬉しい気持ちだけでなく、そこに生まれるエゴや打算なども、きっちりと描かれます。だからこそ、爽やかな読了というよりも、心に一石投じるようなことも多く。わたしは、そんなところが魅力だなと。恋も愛も欲と葛藤満載なのが実際だから。高橋と浩一はずっとこうやっていろいろ乗り越えていくんだろーな。柿本くんは迷いながら、進んでいきそうです。そもそも、性的指向って、ハッキリしていない方が多いのかもしれません。改めて考えないからこその。
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