だけど、明日の話をしよう
」のレビュー

だけど、明日の話をしよう

あさひよひ

許せない罪のつぐない方

ネタバレ
2022年7月22日
このレビューはネタバレを含みます▼ 今作品は評価が低かったのですが(レビュー書いている時点で2.0です)、「私と猫と二十歳の君と」の作者さまなので、心情に訴える出会いがあるのでは?と期待して読みました。
結果、自分の嗅覚グッジョブ!の大正解でした。
以下ネタバレします。→→→
………
一人の男、茜の罪と罰と贖罪の物語です。
あさひ先生の、どストレートには描かない作風でじわじわと息が詰まっていきました。
双子の弟、メイが茜の過失で亡くなっています。
主人公の抱える劣等感、弟への羨望、そして罪悪感。
どう足掻いても逃れられない負の感情で、暗い雰囲気の中お話が進みます。

もし茜が真相を告げていれば法的には過失致死罪です。
懲役は無く、50万円以下の罰金となります。
しかし茜は罪を自分の中に閉じ込め、一人で苦しむ道を選びます。
有罪判決を受け刑罰を与えられ、弟殺しの評判に晒された方がよほど楽だったに違いなかったでしょう。
普通の弱い人間はそうやって他人に責められることで自分の罪をつぐなうと思います。
しかし茜は、ひたすら自分を殺し自分を許しません。
まだ足りない、まだ充分ではない、この罪は赦されてはいけないのだと心の自傷行為の日々です。

攻めの圭介の心情も見逃せません。
なぜ恋人の双子の兄を傍に置いているのか?
恋人が亡くなって年月が経つうちに変化する心情とは?
揺り戻しのように襲う今は亡き恋人への思い。

苦しいばかりだった日常が、年月と共に苦しさ以外のモノも確かに存在していると自覚した時、物語的に転機が訪れます。
そこまでいく間に、茜が発狂してしまうのではないかとドキドキと辛かったのですが、無事に乗り越えられた安堵感が凄かったです。
夜明けの幸福感が、あらゆる負の感情のUターンでお日様に照らされたような感覚でした。

BLあるあるの、オチでの幸せエッチが無いのが更に良かったです。
そんな軽薄は似つかわしくない物語だと思いました。
でも一応幸せじゃないエッチはしています。
修正はほとんどが見えない構図です。
いいねしたユーザ14人
レビューをシェアしよう!