夏の塩
」のレビュー

夏の塩

榎田尤利/茶屋町勝呂

名作ではないでしょうか。

ネタバレ
2022年7月30日
このレビューはネタバレを含みます▼ 榎田先生の作品に描かれるのは、なんでもない日常の一コマから出てくる生と死、人の心の秘密わ深淵。と、勝手に思っています。どんな作品でもね。だから、ちょっと胸にカリカリと爪を立てるように刻まれるところがあるのです。BLとか。そんなジャンル分けしないでずっと本を読んできたのです。いまはジャンル分けされてるのが当たり前なんでね、なんとも思いませんが。でも、そのジャンル分けでこの作品が届かないところがあったらと思うと、惜しい。文学という物。それが今どんな作品たちなのか。そこに拘らなくなって久しいからこそ、より感じます。個人的には愛も恋も友情も共感も。何もかも人間の感情や想いは性別で区切れないし、区切ってなかったのです。普通の垣根ってなんだろー。と、思いつつ。魚住くんがただ、生命体として生きている状態からだんだんと感情を持って人と関わって行く。それを通して読者であるこちら側は心という物の繊細であり、鈍感であり、自己も他者をも惑わす形のあってないような物を見るような。だから、魚住くんだけでなく、取り巻く人々の胸の内。日々の出逢いに胸が揺れるのです。読了後の満足が半端ない。榎田先生は天才だ。
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