私刑ゲーム
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私刑ゲーム

あまね水咲

逆恨みの果て、誰一人幸せにならない惨劇

ネタバレ
2022年8月4日
このレビューはネタバレを含みます▼ 生への本能と良心の狭間で生き延びた先に何があるのかと見てみれば、
逆恨みに等しい動機と空しい結末。
喧嘩で言う一方的な殴り逃げに近く、残るのは陰鬱な感情のみである。

ゲームの原因となった不幸な事故であるが、中学生であることを考えると
取り立てて責められる要素と言えば、手を上げた龍司と柚月、
真相を闇に葬ろうと先導した京介と言うことになる。

しかし龍司の行動は咄嗟の自己防衛と取ることが可能であり、
真相を語ったところで、世間に悪意を持たれる確率が高いことを鑑みれば
一切の口外を禁じた京介も致し方ないと言えなくもない。
柚月の行動は隼人を失いたくない故と見られるが、
それが既に害意を失った対象への直接の引導となれば、恨みを買うのも頷ける。

だが、第一ゲームの被害者が彼女だと知れば、明らかにやり過ぎである。
かつての友人と再会した事にも気づいてもらえず、
視界も言葉も遮られた状態の柚月が最期、どんな思いで隼人の腕に縋ったのか
考えると遣り切れない。加えて残虐な方法で年端も行かぬ少年少女を弄び、
危害を加えていく様は醜悪である。設定の甘さもあるのだろうが、
このような逆恨みに近い復讐者には到底肩入れすることはできない。

結果、後味の悪さだけが残ったので、学生がひどい目に遭うのを見たい人以外には
お勧めしかねます。
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