魔法のリノベ
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魔法のリノベ

星崎真紀

現実を巧みに取り入れた未来の設計が面白い

2022年8月11日
爽快感溢れる話。リノベーションとは大規模な改築を含む工事のこと、一方リフォームとは老朽化した箇所を新しいものにする工事のことだと解説がある。1話1話(2話で前後編もある)で各案件が、顧客の満足感と共に成約。注文者の隠れたニーズまで掬い取っていって、納得の素敵なソリューションを、メインキャラである営業2人(正確には設計担当の腕)が導き出す。それを横軸とすれば二人の関係が縦軸、徐々に親しさを増す。 シーモア島で知った書籍。JOURすてきな主婦たち誌2015 年4月号開始らしい。最新刊4巻迄読んだ。3巻は2018年2月号迄を収録とあるが4巻には初出情報の記載無し。TVドラマ化の今年、5巻発行決定とのこと。4巻で幕引きされていたとみれば、リノベ案件の各エピソードが入れ子状態であることで一区切り付いてきていた、小梅と玄之介の二人の仲の今後はご想像に、で良かったかもしれない。(私は作者の決めた結末のその先は特には欲しないタイプ。描かれたのなら、読もうかというタイプ。)
もっと二人の発展にもストーリーの柱を担ってもらうのだったら、二人の感情シーンは弱い。二人の性格付けからは無理もない、という側面も分かるが、視覚的にキラキラの一部キラの片鱗を見たい。どこかムードが漂ったり予感のする関係であるツーショットだったりが足りない。特に玄之介が地味。恋愛の芽を仕込ませるならそこは少し、小梅目線ではちょっと見栄えよく見えるよう、又は、自信が高くない控えめキャラなりにもいい人で終わらない見せ場があったらと思う。
頁全体として大体が白っぽく小梅の髪色だけで黒を感じるのみ。
恐らく分業して間取り図等は星崎先生以外の手と想像すると、人間や家屋にも美化の余地はあると期待する。作品が振り撒いている夢要素を、もっと主人公の人間まわりにも感じられるよう、濃く見せてもらえたら、と思う。今は薄くて細くて存在感が弱すぎると感じている。話優先で少しだけ相対的に絵が負けてる。
ストーリーは心がポッと希望で温まる。明るく未来に向かう感じがとてもいい。仕事のやりがい、面白さが伝わる。喜ばれて、幸せをもたらすのは読んでいて、自分も力づけられる。実用的な筋立てで現実的なのに夢がある、というのはいいところに話の焦点が行ったんだなぁと、意外で新鮮さを感じるストーリー。マドリストは間取り図で夢を膨らます、と。何だか地図やパンフで想像の旅行気分を味わうのと似てる。
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