西荻窪ランスルー
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西荻窪ランスルー

ゆき林檎

アニメ制作にイチから入った女の子の話

2022年8月18日
アニメのクリエイター達の世界。仕事の現場の勤務時間が、巷間いわれるイメージ通り、長時間で深夜にも渡り朝帰宅もある世界。職場や業界、日常を切り取ってきて何気ないエピソードの積み重ねの中で、一話一話に彼らが息づいている。成長物語にして群像劇もあって、全4巻23話の構成が丁度いい手頃感。断面を淡々と見せているようで、本人達は手を動かし学び、身体が着実に経験値を上げていく姿に、静かな熱を感じさせられる。
取り組みは真面目で、目の前のことに集中していて、かといって職場の人間関係が淡白とはいえず。。毎日が同じように過ぎ去っているようでその実は奥底で変化があって、別れと出会いが起こる。その描写が、まるで本当に内側を見ているかのよう。
そこにいる人達の心情が理解出来る巧みな流れで、シビアな現実も、黙々と向き合う忙しい日々も、個人個人の足元とその先の道も、なんだかリアルなのに(主人公は天才ではない)、登り階段頑張ってと声を掛けたくなってくる。うまいことばかりじゃない。手を動かし、いろいろ感じ取って、生きている、そんな感じ。そのくらい、実在感も出してくる業界物語だった。

BL漫画家の顔を持つゆき林檎先生には、このように、BL以外もどんどん描いていって欲しい。
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