このレビューはネタバレを含みます▼
●本文40P。気になっていたけど初めて拝読する作者さん。(他の作品とは雰囲気が違うような気もしますがどうなんだろう?)自分としては珍しく、読んでいて涙が…。ほぼ表紙の4人しか登場しませんが、黒髪の男性といい感じになるお話ではありません。親子の物語、サブタイトルにもあるように、“とある一家の事情”です。父と息子の会話がとても良い。以下いろいろ書きますが、ひとまずはレビューを見ずに読んでみていただきたい本作です。
●妻に離婚された父は息子と共に暮らしていて、長く一緒に仕事をしているハルゾノのことをちょっといいなと思ってる。父はあるとき14歳の息子がハルゾノに恋していることに気付き、「俺と同じゲイか」「かわいそうに」と考えるのです。
●父も息子と同じ年端の頃に男に恋をした。想いは胸に秘め、見ているだけで終わった恋。大人になり、自分も相手も偽って結婚して、今もまたハルゾノには何も告げるつもりはない。自分と同じ性指向の息子を「かわいそうに」と表現する父が、ゲイとしてどんな人生を送ってきたのか想像してしまいます。
●俺と同じだ、やはり似ている、と思っていたのに、息子は父が予想もしなかった行動をとるのです。「お前は俺とは違うんだな」という独り言に、母さんの血も入っているんだもんな…と添えられたところがなんとも良いなと思いました。
●息子の勇気、父の気付き。二人の対話に胸を打たれます。涙止まらん…。そして『ハレの日』へ。ラストシーンでの元夫婦の会話、表情もとても良かったです。