このレビューはネタバレを含みます▼
映画のように、全てを語らずモノローグもなく進んでいく物語に街の設定とキャラクターのビジュアルと性格すべてが相まってお洒落すぎる一品。難点があるとしたら読んでいると煙草を吸いたくて仕方なくなってしまうところくらい。
煙草が高所得者向けのものとして、ブランドロゴ入りの箱に丁重にしまわれて、宝石のように売られているという設定がかなり好きです。現実でもそんな装丁して欲しい。
治安の悪い地区出身の全員前科ありの中年男四人組が、首都で人生のやり直しをはかる物語は、その年齢層らしく事件があってもスマートに対応していくところがかっこいい。刑に服した経験があるからこそなのか、トラブルがあっても誰かの過ちを責めたりせずそれぞれができることを粛々とやっていくというのが、読んでいて気持ちがいいです。
序盤のストーリーの中で、やらかした義弟に対し強くあたる兄を見て、ハートが「罪が曖昧なとき、何をすれば奴は許される」と言ったセリフがとても印象的でした。
この物語は、ところどころでそれぞれのキャラが他人を許したり自分を許したりします。生きていく中で、故意・過失を問わず罪を犯してしまった後、その人はずっとそのことだけに囚われ身動きできず反省だけをして生きていかないといけないのか?
それぞれに思うところはあれど、起業したり、友達を作ったり恋をしたりして人生を再起していく癒しがあります。
まだまだハートのツテ関係など、新しい人生にとって暗雲を連れてくるかもしれない不安要素はありますが、今後の展開が楽しみです。
まるで煙草のように、読み終わってしまうのが惜しいくらい素敵な漫画。