明日、私は誰かのカノジョ
」のレビュー

明日、私は誰かのカノジョ

をのひなお

人間はうまい言葉にのりたいものですよね

ネタバレ
2022年9月3日
このレビューはネタバレを含みます▼ 作者さんの取材力すごいですね。。臨場感ありすぎて読むのが毎度怖いです。ホスト編がとても面白く、自分がやりたくないことをしてお金を稼いで、ホストからもらえる見返りはほんの少しで、やめればいいのにと外野はいくらでも言えますが、ゆあてゃも萌たゃもその居場所が自分にとって必要なのだと思う状況にいたからそこにどうしても固執してしまうんだということを考えると、正論をふりかざす意味のなさを考えさせられます。楓はとても魅力的なキャラクターで、最後まで嫌な面を見せない「しごでき」なところがよかったです。楓との仲は売り物で本物ではなかったんだと現実をつきつけられたのが、LINEのメッセージたった一通というところがやるせない気持ちになり、読者としても名前間違いで急に萌と一緒に現実に引き戻されてしまうような気持ちになりました。そしてそこへ、元いたバーからのばかばかしいメッセージに一緒に救われ笑いました。ホストとの一連の出来事を、悲しいながらも「大恋愛してきたよ」と笑って話す萌たゃに、強い子だなぁと思いました。
それから印象的だったのは菜々美さん編。それまでの主人公より一気に年齢層が上がり、アラフォーで職務経験もお水ばかりのエミが、独り身でなにかにすがらずにはいられないという気持ちはすごくよくわかります。なにかこう現実をよくできる突破口を欲しがるのは人間の性だと思います。でも結局、コツコツやるしかないし、現状もそう悪いことばかりでもないと、理想とは違うけど妥協を受け入れていくのはとても難しいし目をそらしたくなるものです。そういう人間のエグい部分を目の当たりにさせられてしんどいのと面白いのとで、重みのある作品です。
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