錆のゆめ
」のレビュー

錆のゆめ

久間よよよ

『上下』の後『左右』必読かと

ネタバレ
2022年9月14日
このレビューはネタバレを含みます▼ ●実はずいぶん前に『左』だけ拝読しており、ああ、これは通して読まなくちゃだめだ…と思い、今回ようやく全部拝読しました。『左』のうっすらとした記憶をたどりつつ、『上下』→『右』→『左(右をめくりながら)』→もう一度『上下』と読みました。
●としおは少年の時分に頭と身体をいじられて、下衆な大人たちの性道具にされている。言葉も話せないし、身体は快楽を求めてしまう。でも、心は失われてないんだなぁ…。言われてることは理解でき、進藤の言動を“この人は優しい”と受け止めることもでき、としおは進藤に対してその心を委ねていきます。進藤のために一生懸命な姿が、とてもとても愛おしい。
●そして進藤の愛がすごい。表情に出ず淡々としているから分かりにくいし、その愛をどういう言葉で表現するのが正しいのか分からないのですが。救わなければ、という責任感もあったでしょう。他の奴にどうこうされたくない、というのは、単純な嫌悪感でもあり、隠れた独占欲でもあったのでしょう。としおの見る夢に巻き込まれている描写などは、性欲まで抱いているようにも思える。としおという存在を愛してるし、愛したいのです、進藤は。そして、としおと過ごす時間に、進藤もささやかな幸せを感じているのです。
●『上下』を読まれたら、もう一歩踏み込んで愛情と葛藤が描かれている『左右』も是非読んでいただきたいです。それでようやくホッと息をつくことができます。(その後にも一抹の不安は残るのですけど…。)割引やクーポンの機会もきっとありますので、是非どうぞ。個人的には『左右』を読んでようやく『上下』が心に沁みました。『左右』含めて★5です。
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