このレビューはネタバレを含みます▼
僕は山村美紗氏が他界される何年か前にこの推理小説の存在を知り、今回初めて、それもコミックシーモアで購入しました。この推理小説も「京都殺人地図」と同じく「江夏冬子」が主人公になっているんですね。桔梗堂の主人の「杉尾万作」が清水坂で殺されるのをきっかけに、彼の長男の三千彦が白骨死体で発見され、そして事件の鍵を握る万年屋までが殺されて容疑者が二転三転すると言うあらすじがとても山村美紗氏らしいですね。「謎のない推理小説」や「性描写のない少女漫画」は「気の抜けたビール」や「苦味の抜けたコーヒー」や「山葵の抜けた握り寿司」みたいなものですから。それにしましても、この推理小説の殺人犯の「仲三郎」と言う男の欲深さと往生際の悪さには無性に腹が立ちました。只純粋に陶芸一筋に励んでいれば良かったのに、財産や色欲に目が眩んで、情事を目撃した「杉尾三千彦」を殺害してしまったのですから。この推理小説によって改めて山村美紗氏の偉大さを思い知らされました。