錆のゆめ 左
」のレビュー

錆のゆめ 左

久間よよよ

上下、右、左、繰り返し読んでしまう

ネタバレ
2022年9月16日
このレビューはネタバレを含みます▼ ●『上下』→『右』→『左』と2巡しましたが、2巡目の『左右』では泣いてしまいました。二人が積み重ねる時間、会話、触れ合いが、とにかく愛おしい。そんな感情の隅の方で、ずっとチリチリと不安がつきまとう。
●作者さんが『左右』を“双子の本”と表現されています。実際描かれた時期も重なっていて、作中の時間軸も重なりがあります(後半は特に)。私は並行させて読みました。(紙の本なら両手に広げて読んでる状態。)同じ一日のことを、左右でそういうふうに描き分けるのか…とか。
●こちらの『左』では、ふたつの大きな出来事があります。ひとつは、ご近所さんとの付き合い、それがきっかけになっての引っ越し。もうひとつは…としおが自らの過去を知り、自分自身と向き合う。もちろんそばには進藤がいる。
●としおは元々人の気持ちに聡い。言葉を話せなかった頃から(いや、そうなる前から)聡かった。この『左』では特にそれを感じました。相手のいろんな感情を拾うことができる。良いものも、悪いものも。そして、思いやりをもって相手に接することができる。進藤も、としおからたくさん受け取ってるんだなぁ…
●『上下左右』とも初読時は、としおのビジュアルや境遇、しゃべり方、ファンシーな絵柄を用いた画面表現、テンポ、進藤の淡々とした反応、あらゆる部分に違和感(あるいは嫌悪感)を覚えるかもしれません。でも、読めば読むほどそれらを意識せずに作品を感じられるようになってきた。あえて違和感を前面に出して描いてあるのかと思うほど、その真髄はピュアそのもの。心と心の、魂と魂の触れ合い。
●『左』の描き下ろしが、作中の時系列としては一番最後になるかと思います。ほのぼのとした日常の一コマ。でも私は二人の未来を想像するのが怖いです。どうしようもない不安がそこにあります。どうか二人がさいごまで幸せでありますように。
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