親愛なるジーンへ 2(特装版)
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親愛なるジーンへ 2(特装版)

吾妻香夜

見方が変わってしまった

ネタバレ
2022年9月18日
このレビューはネタバレを含みます▼ 1巻で見ていた思慮深いジーンから比べると、ずいぶん変わったのだなと思わずにいられなかった。それは成長というよりは世間擦れしてしまった印象。
加えてトレヴァーが傾けたひたすらに無償の愛の数々を、少しずつどこか当たり前に思っているような、傲慢にさえ見えるようなそんな部分が見えてしまって。「僕は自分で選んできた」と言っていたあのシーンが、ジーンの変化を表している気がする。
故郷を捨て行き場をなくし、自分の選択に後悔さえしていたジーンに、トレヴァーが手を差し伸べ必要な何もかもを手渡してくれたからこそ今のジーンがあるのに、あの雪の日で彼の人生は終わっていたかもしれないのに…

カナダで学びたいと言われたときのトレヴァーの思いを考えると本当に胸が苦しくなる。
手つかずの料理の残った皿、テイクアウトを断ったときの目を伏せたトレヴァー…
あげられるものは何でも手渡して、今度は彼の未来のために独りになることも受け入れて、そうやってジーンを赦し励ました彼の深い深い愛情、そしてその陰にあったトレヴァーの悲しみと諦めを、あの傲りが若者特有の「らしさ」だったとしても、ジーンはいったいどれだけ理解していたんだろう。トレヴァーが与えてくれた一つ一つが何一つとして当たり前にできることではないことも。
そう思うとどうしてもモヤモヤの晴れない気持ちになる。

甥っ子ジーンが手紙を出したことで二人の人生に再び接点ができて再会したけれども、ジーン自身はトレヴァーへの想いで会いに来たわけでもなかったし、また共に暮らし始めて3ヶ月過ぎてもどうなりたいか「よくわからない」というあのジーンの言葉は、彼のために独りを受け入れあの日々を糧に生きていたトレヴァーの恋心と愛情を思うと、なんとも薄情な言葉に思えてしまう。
同じ目線で伝えるようになったことが彼の成長した部分としても、私は1巻の思慮深く、相手を思いやろうとするジーンが好きだった。
何か、?な勘違いをされてる方がいるようだけれど、トレヴァーがジーンのために「してあげた」などとは露ほども思っていないことは、読んだ人の全てがわかっていることでしょう。だからこそトレヴァーの人となりと愛が尊くそして同時に切なくもあるのだということですよ。
ひたすらにジーンの幸せを願い、その未来と可能性までも愛おしんだトレヴァーの16年の孤独と恋心が、はっきりした形で報われてほしかった。
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