春を見たくなったんだ
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春を見たくなったんだ

温々ぬぬ

感性のみずみずしさ

2022年10月18日
受験に染まった生徒の中で、冬司には児玉先生の声が届いていた。芽吹いた思いは土の中で春を待つ。
志した、伝えたい思いが生徒に届かない現実に心折れ、実家の酒屋を手伝っていた児玉先生。
あの日が再び二人を結びつける。
最初から違和感はあった。「宗司」と呼びかけたときの反応。雰囲気。
先生と生徒の関係は、生徒の成人後、最初の夜の出合いで体を重ねることになって大きく動いた。
若い児玉先生の文学への思いを冬司のみずみずしい感性が受け取り、思いは受け継がれていく。そのことがきちんと描かれていて、美しい。
体を重ねる画面はない。それがよい。
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