花よりも花の如く
」のレビュー

花よりも花の如く

成田美名子

能楽と能役者の世界をよく知ることが出来る

2022年10月20日
ストーリーは付属物という側面で捉えたらいいような感じ。なによりも、お能の世界の隅々を見せてもらっている感じ。
憲人という若き能役者の日々を描く。家庭事情あり、所属する世界の人間関係の現代的な悩みあり(サラリとしていて大人である)、演じる作品の解釈や迷いあり。とそして、どう育っていくかわからない、好意を持ってる女性とのやり取りの中の、相手の心が読めぬ故の、外堀からの手さぐりや試行錯誤だったりもある。
これは能楽研究部に社会人サークル活動で属した私にはたまらなく面白い世界。
でも、まずそこに興味を持てぬ人には退屈になりかねない世界。
絵が驚異的に丁寧、御謡の言葉の縦書きが随所に各頁で複数のコマを貫き、そこがまた、謡を学んだ者にはひどく懐かしいし、或いは学んでなかった曲目には興味を掻き立てられる。が、これも、その感覚が理解されるかどうか。

芸ごととして、という視点よりも、ずっと内側、内部者視点で作品舞台を研究のために実地見学するくだりが多いのも、漫画というビジュアル表現でしっかり懇切丁寧に見せつけられ、改めて演目の舞台となった地と歴史的建造物の、本作品との有機的な印象の長い関係性に、圧倒される。

もっと大勢の人が実際の能舞台に出掛け触れていたら、奧深いところまで見せてくれてるこの作品の、通り一辺倒ではない能楽の魅力が共有してもらえるのに。

17巻まで読んだところ。(現在既刊20巻。未完結)
評価の星数は将来の能楽の普及と発展のために肩入れし付けたもの。
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