そこをなんとか
」のレビュー

そこをなんとか

麻生みこと

仰々しくない弁護士物なのにドラマチック

2022年10月22日
テレビで見る弁護士登場のドラマは、法廷闘争が長かったりで堅苦しかったり、言葉尻を捉え合っての一見水掛け論の応酬とみまごう面倒臭さがあったりすることがあるが、この漫画、世の中のあらゆる人物の民事刑事またそこに引っ掛からないレベルのあれこれに至るまで、噛み砕いて両者の立場や言い分を出してくるので、場外戦がとてもドラマとして出来ている。実は法律ってもっと引き出しは多くてそして、どう進めていくかは当事者次第なのかも、と、読んでて感じる。
主人公の感覚も分かるし、先輩弁護士や所長先生のキャラ、そして、相談を受けたり弁護を担当することになったりする相手のキャラの置かれた状況にも配慮出来たり、相手方の事情も考え及んだり出来るような、巧みな展開が、効率的な捌き方(裁き、ではなくて)で漫画として楽しめる。
最初はゆるい感じに(主人公の構え方にしても)思っていたが、全然違う。
絡まり合う対立者同士の背景が見事に描写されていて、また、ストーリーを楽しむと同時に、当初ゆるいと感じたビジュアルも逆にこうした法律絡みの堅さを取り払って、想像力を助けてくれてる。心情に寄り添える感じ。
悪人善人の単純な二分を予断をもってさせない、というのにも機能している。

シーモア島で毎日無料連載の中にあると教わって読み始めてまだ23話、163話までは行けるようだが、全15巻で完結しているようなので、一気買いで早く読み進めたい気持ちと日々闘っている。

タイトルづけのセンスがまた、この作品の価値を押し上げてると感じる。

実生活で弁護士と関わることは恐らくないかもしれないからこそ、この作品を読むとそこにある世界を覗かせて貰う面白さがある。
その一方で、将来にもしも必要なときが来たとしたら、この漫画が伝える親近感?なり、説得力?かリアリティー?なりが、きっと大きな安心材料、そういった専門職の方々への信用や理解に繋がる気がして、知らなかった世の中のいち部分を掴んだような気持ち、いくらか賢くなった感覚も味わえる。

大袈裟なドラマとしてあるのではなく、誰にとっても弁護士の関わる処にドラマあり、という感じなのだ。

2023/2/1読了。巧みなストーリーに中弛み無く引っ張られ、また、独特の味がある絵に飽きることなく空気を楽しめた。ドラマ作りの才能豊か。言葉選びや構図解説が法的な論点整理に効果的、読み易さと中身とが両立。これは大収穫。
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