このレビューはネタバレを含みます▼
人の血以外摂取できなくなり、どんな方法を試しても死ねなくなり、人よりもはるかに遅い速度でしか歳を取らなくなった… 吸血鬼になった医者忠雪が自身の運命を呪い生き方に悩み苦しみもがく中で、「俺を頼れ」と先輩医師十字は言葉数少なくも、忠雪自身の為人を見初めて共に生き歩み始める。
でも、どんなに歳を重ねようが30代のままの見た目の忠雪は自身の家族にも会えなくなり、怪しまれぬよう勤務先も定期的に変更しなければならないといったように、自分だけが時の流れと生命の瞬きから取り残されていく感覚に苛まれていきます。
十字が忠雪にあげたもの、十字が忠雪からもらったもの、忠雪が十字にあげたもの、忠雪が十字からもらったもの…。全てが温かく混じりっけのない純粋な愛情で…読んでいて胸の辺りがギューッと切なさで締め付けられて、同時にすごく温かく感じられて、でもどうしようもない時間の流れに2人の別れが訪れて、涙止まりません。
2人が身体を重ね愛し合う様子が見たくないと言えば嘘になりますが、その描写がなくてもこれだけの愛を感じられたのは、戸ヶ谷先生と編集に携わられた方々のお力だと思います。
すごく切なく悲しかったですが、こんな素敵な作品に出会えて本当に幸せだと思える作品でした。
戸ヶ谷先生が巻末に、制作中のご自身のイメージソングを掲載してくださっています。合わせて聴くととてもいい気がしました。 ただ、私は個人的に、作品全体を通じてyamaさんの「lost」が非常に合うなと思いました。
一巻で完結かとも思いますが… 惜しすぎる…愛し合う2人がもっと見たかったです…。