日の当たらない場所
」のレビュー

日の当たらない場所

たつもとみお

ラブだけじゃない読み応え。

ネタバレ
2022年10月26日
このレビューはネタバレを含みます▼ 小さな島の漁師町。日差しを浴びて働く人間が大半のこの島で、漁師の一人息子として生まれた日光アレルギーの寛也の絶望感に心が痛くなる。逃げるように島を出て15年…ゲイを隠さなくて良い環境、信頼できる同僚、やりがいのある仕事と全てが順調に思えても、心にあるのは故郷の島と初恋相手の拓斗。
寛也が浴びる事が出来ない太陽の光のように、拓斗は明るくて眩しい存在だった。でもそんな彼にも心の闇があって…両親は相次いで島を出ていき音信不通で、常に「女」である母親への嫌悪感から拓斗は女性と関係を築けない。皮肉にも、何の疎外感も葛藤も無くこの島で成長しただろうかつての同級生達は島を出ていき、拓斗は島に残り孤独を募らせていく。
廃れた島の町おこしをきっかけに2人は再会し、止まっていた時間がまた動き出す…。
小さな島の町おこしそのものが読み応えがあって、厳しい財政状況や保守的な島民の反発や妨害行為、悪意のネット書き込み等もリアルにありそうだ。イベントが成功した時には、私もほっと息をついてしまった。
遠距離ながらも、お互いの環境を尊重しつつ明るい未来のあるハッピーエンドで、読んで良かった。
あと、特典マンガの夜の水泳教室が可愛い過ぎる…。
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