あと一歩、そばに来て
」のレビュー

あと一歩、そばに来て

武田登竜門

これを読んで作者のファンになった

ネタバレ
2022年10月31日
このレビューはネタバレを含みます▼ 紙本を購入した作品のレビューを、ここでするのはいいんだろうかと思いつつ書く。本屋で平積みされていたときに、表紙に一目ぼれして購入した。今でも時々表紙だけながめてうっとりする。色合い、目、髪、すべてが生きている。すごくいい。2022年で一番好きな表紙。レビューで真珠の耳飾りの少女のことを書いてらっしゃる方がいたが、なるほど確かに同じような角度だなと思った。表紙の女性は片耳しか耳飾りをしていなくて、裏表紙には首飾りのようなものが描かれているのだけれど、作品を読むと片耳だけの耳飾りとこの首飾りのつながりがわかる。本当にいいカバー。私はこの短編集ですっかり作者のファンになり、別作品も全巻購入してしまった。ストーリーもいいのだけれど、とにかく絵がいい。ただうまいとかきれいだとかいう絵ではなくて、なんか生きてる、動いてる絵。すごくいい。作者が細部までこだわって、工夫して描かれているのはすごく伝わってくるし、いろんな人にぜひ読んでみて!と言いたくなる作品。
一番好きなのは「悪くはねえけど」。まさに「何もかもひっくるめて人生はつづく」、いい話だと思った。また、「その時がきたら」について、作者があとがきで、「何もしないということを根気強く続けることでしか表されない信頼」というようなことを書かれていて、すごくささる言葉だった。こういう作品は、思い入ればかり強くなって大した感想が書けない。でも本当によい短編集。なお、武田登竜門先生ご自身が書いてらしたのだが、「TL小説とまんがにっぽん昔話のエッセンスが随所に見える短編集」とのこと。TL小説ってどこら辺がそうなんだろう、気になった。
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