このレビューはネタバレを含みます▼
77ページと、普通で言えば前後編くらいのページ数のお話ですが300ページ越えほどのボリューム感を得ました。そして評価ほ星が5つでは足りません!
親の離婚、高齢者の介護、ひとり親家庭、と現代社会の問題が盛り込まれた中に、献身的な兄の姿に尊敬と敬愛の眼差しを寄せる弟目線のお話──泣いてしまいました。
自分の夢も希望も、ちょっとした休息さえも介護と家事に追われた兄ちゃんは、まだ中学生という身では本当に辛かったと思います。大人でも辛いのに、何年も何年も、毎日毎日続く終わりの見えない日常から逃げ出すこともなく、唯一の支えがななくんだったのかな。誰かの死に直面し悲しみと同時に雁字搦めだった生活から解放され静寂が戻ったことへの安堵は、悲しくも理解は容易くもあります。誰もが自分の人生を生きているのだから。でも兄ちゃんはそれを悔いている‥
認めたくなくまた世間体を気にする母親の態度も現実からしたら当然の反応で、それを嗜め咈怒した史くんの姿にぐっときました。できた子だ(涙)
共にいる人を見つけた後も、信頼し合い、兄を誇らしく思う弟と弟を誇らしく思う兄の姿があります。
最後の最後までこのままただ兄がゲイであり、でもとっても自慢の兄だ‥という内容で終わると思っていました。それらしいシーンはなく、史くんの想像の1コマだけで──私も史くんと同じような想像をしましたよ。格好よい兄がたおやかなななくんを‥と。その想像で終わりだと思っていたので「親友の話」で‥ななくんの前ではかわいい兄ちゃんだったのですね。