真綿の檻【マイクロ】
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真綿の檻【マイクロ】

尾崎衣良

夫婦生活藪の中

2022年11月19日
夫婦のことは当の夫婦にしかわからないことがある、とはよく言いますが、ある夫婦のことを、妻の弟嫁、弟、母親から語らせて、読者の視線を誘導した後に、当事者である妻と夫の心情吐露で話をひっくり返す演出が秀逸です。そして、娘の話の後に母親の話でオチをつける。母娘の相克はそれこそよくある話なんですが、このお話は、娘がメンタル病んで母親を延々恨むとか、母親が自立した娘を呪うとかの類型にならうこともなく、また安易に和解することもなく、個々の生活を大事にしてみつめていく話なので読後感がいいです。「深夜のダメ恋図鑑」と同一の作家さんなんですね。あれも共感6割で楽しく読みましたが、こちらも、母親(もしくは両親)との関係でもやもやしたものがある読者にはうなずくポイント多いと思います。
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