無恋愛紳士
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無恋愛紳士

ARUKU

太陽が地球を飲み込む時方舟に乗る二人

ネタバレ
2022年11月27日
このレビューはネタバレを含みます▼ 読んでいる時、読後、じんわり迫ってくるものがあります。
ひとふた昔前の外国で出版された恋愛小説のようです。セピア色でメロウな気持ちになるというか。そして感覚では判るのに頭で理解して言葉に例えるのが難しい‥ちょっと小難しくてでも心のどこかをこそこそとくすぐられるような感じ。徐々に温かくなってくるのです。モノドラマ。日夏くんのポエムちっくなモノローグや蘇芳さんの感覚がそう思わせるのかもしれません。
お話はだいたい一話、扉ページ込みで32くらい。1話30弱、最終話36くらい。でもどの回もすごく濃くてみっちり無駄なくエピソードが盛り込まれているのでそれぞれ50ページはあって、一冊214ページがまるで500ページを越えるかのような満足感がありました。詳細に描き込まれた1コマ1コマが見せ場です。モブや小物、背景さえも手抜きなく描かれていて、ストーリーテンポの調整がとれるミニコマや吹き出しにいる二人は、コマ撮り粘土アニメの1コマみたいに、その一瞬を切り抜いているかのようで愛おしいです。
初めは堅苦しく見えた蘇芳さんが日夏くんといてだんだんと柔らかい美人さんになっていくのにはドキドキします。恋愛無感情者──無性愛者だから日夏くんに傾く心に気付かないというのもチャームポイント。太陽が地球の飲み込む時に日夏くんと方舟に乗れそうでよかったです。
日夏くん、なんで鞄一つきりの品の生活なんだろう‥マミイだけ。結婚離婚遍歴から博愛主義者なのかと思ったけれどそうでもなさそう。蘇芳さん一筋だったんだし。謎が多いです。でも判っていることは蘇芳さんを方舟に乗せてくれるってこと。そして蘇芳さん専用ストーカー。
ハリセンちゃんとマミイが一緒にいる世界が、蘇芳さんと日夏くんの世界を表してくれています。
うまくレビューできないのですが、最高すぎて手放せない一冊になりました。
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