人魚の恋に触れたなら[1話売り]
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人魚の恋に触れたなら[1話売り]

イズミハルカ

ありがとう

2022年11月28日
人魚姫のお話は幼き日の私の心に暗い影を落とした。
好きになっても手の届かない対象に一方的に好意を寄せ続けて、会いたい一心で、近づきたい一心で、玉砕承知で退路を断ち切って、自分の肉体を変える痛みも受け入れて。。でも、認識されず…報われることなく…。
あの話は、周りの大人に見向きもされない「マッチ売りの少女」や親に捨てられた形の「ヘンゼルとグレーテル」の話などと共に苦味と悲しみ、お話世界の主人公達の過酷な人生や試練、読後はわだかまりだらけ。特に「人魚姫」は哀れすぎて、読んでるこちらは辛さしかない。どうにも救ってあげられないもどかしさ。
作者ひどい、私ならこんなかわいそうな話作らないのに、と思っていた。その、やりきれなさ筆頭格に感じてた、アンデルセン童話「人魚姫」。
作り手がひとたび世に放ったらその話は、作り手の作り上げた世界。読み手は受け止めるだけの立場。

お話の紡ぎ手だけが別の世界を造ってくれる。

イズミハルカ先生、ありがとうございました。
読後は肺呼吸などに異常無しでした。


シーモア島で紹介されていた作品。安いときがあったみたいで自分の購入価格の半分で買えたというレビューアーさんを見かけた。
あと、私のような暗く根深くしこってしまった本家「人魚姫」の読書体験者が少なくないことも幾つものレビューでわかった。同士が居て同じ思いの人の存在を感じてなんだか嬉しい。

絵は氷魚くん(他にも)の目が大きめで気になった。
ファンタジーには徹しきれず、主人公の立ち位置が、物語の構成要素として大きい比重であるのに、氷魚くんの存在と共存させる難しさ、相容れないような二者の結ばれ方、少々化学反応的な感じが物足りなかった。
それでも、主人公は夏生のほうであって、彼からのアクションがあることが、この作品の、私の胸をすくところだった。
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