このレビューはネタバレを含みます▼
猫好きとしては、家を出た弟クンの後を追うシロの究極に不細工な顔で涙腺崩壊しました。
この作家さんの作品は昔から読んでるし長編もいろいろあるけど、その中でも一番好きかも。
平凡な家庭の日常を描いてて特にドラマティックではないんだけど、だからこそ共感する部分が多くて沁みる。
こんな偏屈な父親って昔はよくいたと思う(祖父・兄がソックリ)。外面はいいけど家族には甘えもあってブラック全開。子供のことも想ってるんだろうけどいかんせん表現の仕方が不器用すぎ。
そして案外精神的に脆かったりする。流されて不倫してるのがもうね…。
人ってグレーで、それは一面グレーなんじゃなくて黒・白・濃グレー・薄グレーの無数の小さなブロックがモザイクになってて、離れて見たらグレーに見えるんだと思う。
横暴で不倫なんかして「親」としたら最低だけど、「妻」として、なんなら「息子」として見たら「馬鹿だねぇ…」とも言いたくなる。
私には不細工だからこそ愛おしく感じるシロとこの父親が重なって見えました。
4本の大黒柱の1本が完全にダメになって3本で支えてるとか、家の修繕の話の比喩も秀逸。
読む時の年齢・立場によって父親への、ひいては作品の印象が変わると思うので賛否両論あって当然。この父親が嫌いな人は忘れた頃にまた読んでみて欲しい。人生のステージで感想が変わる、そんな話だと思います。
映画に例えるとミニシアター系、小説なら純文学、大衆受けしないけど良質な作品。この作家さんの作風そのものですね。