泣けない竜は愛を捧げる【電子限定書き下ろしSS付き】【イラスト入り】
葵居ゆゆ/yoco
このレビューはネタバレを含みます▼
竜、騎士、お城、宝石──ここに魔法が加わったらファンタジーのすべてが詰まっているお話です。残念ながら魔法はありませんが。
これでもかというくらい不幸や不当な扱いが起こります。その中でも小さな幸せを噛みしめるルートヴィヒが、このまま幸せになれない結末もあるのではないか‥そんな気になる時も、正直ありました。どこまでも憎まれ、恨まれ、蔑まれる不憫なルートヴィヒが叶わないと知りながらも人間とのふれあいやエリックの愛を諦めながらも願う姿には心を打たれます。そして復讐と憎悪に捕らわれているエリックが苛立ち、嫌悪しながらもルートヴィヒのそばにいて徐々に軟化していく様が印象的です。懐に入れてしまえば、下にも置かず誰にも見せたくない溺愛ぶりは誰もが望むエンディングでしょう。いくら山から出たことがないとはいえあまりにも世間知らずな点がひっかかりますが引き込まれて、ルートヴィヒとエリックの世界を堪能できました。
竜は愛する人の子を産める──二人だけの時間でいたいエリックでしょうけど、両親のように、ルートヴィヒも愛するエリックの子供をもうけられたらよかったです。番外編で読めるかと思いましたが卵は産まれませんでした。見たかったです!ピピがあれこれ小言を言いながらも楽しそうに赤ちゃん竜のお世話をして賑やかになるルートヴィヒ一家を。
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