黄金なるもの、天より堕ち
」のレビュー

黄金なるもの、天より堕ち

伊藤クロエ/乃一ミクロ

話も文章も世界観もとにかくすごかった

ネタバレ
2023年1月2日
このレビューはネタバレを含みます▼ 今まで読むだけでレビューはしたことがなかったですが、いい意味でものすごく驚かされた作品だったので初レビューです。

ルビーコレクションさんはwebからの書籍化専用のレーベルなので初めは購入をためらってしまいました。でも剣闘奴隷×王子というシチュやローマ帝国時代を彷彿とさせる舞台設定でどうしても読みたくて思い切って買いました。
結果文章上手い、ストーリー面白い、ラブシーンがとにかく濃厚、ハピエンとは言いつつ一抹の心配も残るラストの後にそれを吹き飛ばすような幸せな二人の後日談ありと、ものすごいボリュームと満足感とでお値段分は完全に元が取れたと思っています。
文章の巧みさも一般のBL作家さんと比べてもまったく遜色なかったです。

主人公のユーニス(受)は憧れのグイード(攻)が好きすぎて根が真面目な分快楽に弱く少しばかり流されがちですが、それはあくまでグイード相手の恋愛面だけの話で、国の存亡をかけた権謀術数においては敵の目をくらまし水面下で耐えに耐えて一撃必殺の時期を狙いすます静かな熱さがとても良かったです。
幼い頃から剣を志し、それを励ましてくれたことがグイードに憧れたきっかけで、剣闘奴隷に化けた彼と心から笑いあえたのも剣の鍛錬の結果であり、最後は彼の教えを受けた剣筋で皇帝を倒したという流れが硬派でとてもいいと思います。

攻キャラのグイードは三十代半ばとのことですが、確かに酸いも甘いも嚙み分けたようなしたたかさとふてぶてしさ、そして「絶対に一線を越えない」という鉄の意思がいかにも大人の男という感じでユーニスと対称的なのが良いです。
そのくせユーニスだけにはとても熱い秘めた恋情と時々ムッツリスケベっぽいところがあって(笑)そこが好きです。
ただ「強い」と説明されているだけでなくちゃんと無双しまくりなシーンもあって滾ります。

いい意味で読んでも読んでも終わらないボリュームが本当に嬉しくて大晦日から夜明け近くまでかかって一気読みしてしまいました。まさかBL読んで年越しすることになるとは…
こんなに夢中になって読んだのは久しぶりのことで偶然シーモアのランキングでこの話を知って本当に幸運でした。
歴史物や濃厚なラブシーン、媚薬、衆人環視の中でのあれこれ、官能的なのに一途な純愛というアンビバレンツ、身分違いの恋がお好きな人にはぜひおすすめしたい作品です。
いいねしたユーザ2人
レビューをシェアしよう!