絶愛/BRONZE 完全版
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絶愛/BRONZE 完全版

尾崎南

登場人物皆辛い。

ネタバレ
2023年1月7日
このレビューはネタバレを含みます▼ 私は世代ではなく、まだBLというジャンルが確立されてない頃のBL長編漫画をこんな価格で読めることはないと何の事前情報もなくなんとなく軽い気持ちで読み始めました。物語の始まりから殺伐した雰囲気があり、進め方やコマ割りも最近の漫画とは違うのですごく新鮮に感じました。最初は特別受けに執着してしまうクールな攻めかと思ったらとんでもない。再開して初恋と気付くや否や異常なまでに受けについて行き、すがりつきます。徐々に受けはこれほどまでに愛情(よりもっと重いものかも)をぶつけてくる攻めに絆されていきますが、簡単に2人を結ばせてくれない過酷で壮絶で絶望的な展開が次々に起こります。読んでいてやっと2人は幸せになれるんだ、やっとこれで問題は解決したんだって安堵する度に不安に駆られる2人とそれを渦巻く周りの人々。メインcpの晃司と泉の周りはいい人ばかりだけど、敵対する人間も執念深く執拗に2人を不幸へと導きます。晃司が嫌わないで、泉にだけ愛されたいと懇願する場面がたくさん出てきますが、痛いほどに伝わってきてやるせい気持ちに何度もさせられます。読んでいて甘いシーンなんてほんの一瞬しかなく、そこを見逃せばただひたすら辛いです。作品の終わりが最後がメインcpではないキャラの番外編なのでかなりアッサリ終わった感はあります。最終回は色んな解釈があると思いますが私は泉には生きていて欲しいなと思います。晃司の幸せは泉だから、泉には幸せに生きていて欲しいです。生まれてきて良かったと楽しげにサッカーできた時間がほんのわずかに奪われてしまうのが居た堪れない。サッカーがたったひとつだけど晃司も手放したくない泉と、泉さえいればほかに何も要らない晃司。どうして2人のことを放っておいてくれないのか、どうして2人はこのまま堂々と一緒にいられないのか。堂々巡りの2人の思想と堂々巡りのこちらの解釈。作品執筆の最後から月日は経っていますが、もし続きを描いて下さる機会があったら是非読みたいです。先生の脳内を覗いてみたいと思う作品でした。
性癖とは別に心臓に突き刺さる作品でした。止まらず一気読みした後、また一巻から読み返しました。読めば読むほどに辛いのに読む手が止まりません。すごい作品でした。連載当時に出会えた方が羨ましいです。出会えて良かったです。
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