八つ裂きループ令嬢は累計人生百年目に、初めての恋をした。
天ノ瀬/くろこだわに
このレビューはネタバレを含みます▼
ループものとしては珍しい、記憶が“生もの”として続いている設定のお話でした。つまり、ループを重ねる度に過去のことをどんどん忘れていってしまうというもの。一般的なループものって、繰り返しの経験や知識を武器に戦う話が多いのでループ中のことを時間が理由で忘れることってほぼないですが、本作はその、自覚はないけど赤ちゃんの時からやり直してるから十数年経ってループに気付いた時には前世から時間が経ちすぎて記憶が不鮮明になっている、という話です。おかげでヒロインは幼い頃から知ってる人以外の顔と名前を覚えていません。10年も経てば高校時代のクラスメートのことなんてほぼ忘れちゃうのと同じですね。これが結構エモい。どうして前の私はこんなことをしたんだろう?って、ヒーローのためにした行動は覚えているのに、ヒーローの存在そのものは忘れてしまったヒロイン、私はとても刺さりました。なので、記憶喪失系(一日しか記憶が保てない系とか)のネタがお好きな方なら好きなお話じゃないかなと思いました。あと、webの短編をそのまま長編にした感じだったので、web版が面白かったって人なら楽しく読めると思います。ただ一点注意点をあげるとしたら、web版で謎だったことはほぼ謎のままで、ヒロインがヒーローを覚えてなかった理由と、ヒーローの四度目の人生について掘り下げがあったくらいで、それ以外の謎の答えを知りたい!って人には消化不良なお話かもしれません。でも面白かったです。
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