クソ野郎、恋を知る【電子限定描き下ろし付き】
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クソ野郎、恋を知る【電子限定描き下ろし付き】

新藤伊菜

笑えてときめく心に響くお話

ネタバレ
2023年1月26日
このレビューはネタバレを含みます▼ 読み始めは他の漫画をこき下ろす吉田にモヤっとしてこんな主人公好きになれるのか?と思ったんですけど、人物像がわかってくると段々と吉田がかわいく思えてきて、1話を読み終わる頃にはもう好きになっていてすごいです。言動が冒頭のモヤっと部分となんも変わっていないのに悪口も全てかわいく見えてくるんです。不思議。着信がかかってきたときの「今でますぞ〜」が本当にかわいい。

捻くれた部分もあるけど根っこは素直で、だからこそ他を妬むんだけどその負の感情でさえもバネにして努力に変える姿が眩しくて足立先生の憧れる気持ちがわかります。応援したくなる。


連載も持てずに誰からも認められない苦悩が辛くて漫画家をやめたいけど描かない方がもっとずっと苦しい、と泣く吉田が心に響いて引き込まれました。これこそがこの漫画の根幹部分なのかなと。足立先生の「努力を徒労に終わらせないために〜技術を伝えているつもりです」の返しも最高で、背景を知って読むと本当に心に刺さります。かっこいい。

足立先生の普段は優しくて穏やかそうなのにふと描かれるどこか厭世的で繊細な闇を感じる表情や言葉が良くて好きです。ゲルストルの絵の解釈とか、気が合いますねのニヒルな顔とか。そういうところから絵や漫画を続ける苦しみが端々に感じられて物語の深みをだしている気がしました。最後に出てくる足立先生の絵への吉田の解釈が救いでもあり答えでもあるのかな。

ときめくところも笑えるところも沢山あって恋愛物としてとても良かったんですがそれだけじゃなく漫画家や画家のお話としてもとても面白かったです。これからも何度も読み返すくらい大好きなお話です。修正部分は少ないけど薄っすら形がわかる白抜きです。
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