【電子限定特典付】絡まる糸を解くように
」のレビュー

【電子限定特典付】絡まる糸を解くように

吉野ルカ

繊細で美しいお話でした

ネタバレ
2023年1月26日
このレビューはネタバレを含みます▼ ●こちらの作者さんは他に『たぶん愛だろう』を拝読しています(現時点で。他にも読んでみたい…)。本作刊行とは10年の開きがあるんですけど描かれる雰囲気は変わらず、どちらも感情の機微というのか、心が揺れる様子が繊細で、そこが好きです。(そのためキャラクターが優柔不断に見えたり、好意が分かりにくかったりするのはあるかも。)
●あらすじがうまく纏まってるので是非ご一読を。凪いでいた巧弥の感情が、漣にかき乱されていく。漣の名前にこの漢字をあてた(訓読みは“さざなみ”)のがすごいなぁと。巧弥の中に起こった小さな波が、徐々に荒れていく。
●二人とも気持ちが固まる前にえっちしちゃうので、苦手なかたはご注意を。それでも優しいえっちです。漣の方はもう最初から巧弥に惹かれている。作中3回しますが、二人が抱いてる感情がじわじわと変化していくのが好きです。
●特に2回目は、少し胸が苦しくなる。巧弥は堂崎(漣の父)への気持ちを自覚させられてしまった。これはただの憧れじゃないと。漣の方は巧弥を愛しく思うのに、巧弥が自分に父親を重ねていることを感じ取り、分かっていて、それでも抱く。漣の辛そうな顔も巧弥の涙も美しい。
●巧弥がその後、亡き父巧美の想いを紐解きながら堂崎のスーツを仕上げて、自分の気持ちを昇華していく過程も良いです。最後に堂崎に想いを伝え…でも堂崎の反応は…。漣の存在が巧弥も堂崎も救ったのかな。とても良かったです。
●単話版の表紙がモノクロ口絵として収録されていますが、カラーで入れてほしかった〜!表紙裏側のイラストも素敵でした。漣と巧弥の二人が寄り添い、巧美が堂崎のために仕立てていたスーツが柔らかな光の中に立っている。また、細かい&ニッチすぎますが、ほんの数コマ出てくる幼い巧弥もかわいかったです!半ズボン…!
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