このレビューはネタバレを含みます▼
冒頭のヒーローとヒロインとの出会い、ヒーローの生い立ちからしてあまり無い設定で、ほんの数回しか接点がない二人がどう繋がるのかワクワクしました。ヒーローの天才にしか分からないような感覚も面白く、どんどん引き込まれました。仕立て屋という職業のヒーローが作るドレスが依頼人の人生にどんな風に影響するのか、愛する女性を救うための武器になるのか、国政にどんな効果をもたらすのか、そんなことまで描かれていてとても興味深かったです。でもやっぱり一番興味深かったのはヒーローの人となりで、異色のヒーローとしか言いようがありません。平民出で針と糸と腕だけで王室お抱えの仕立て屋に成り上がったヒーローはなんせ言葉遣いが粗野で、傲慢な自信家で、紳士的なのは上辺だけ。自分の感覚やセンスを理解しない相手は見下し心の中でバカにするような人で「これがヒーロー?!」と何度思ったことか。それでもヒロインを助けたいという自分の気持ちに気付いた途端、たちまちカッコいいヒーローに変身してしまいました!絶望的な場面では傲慢な自信家のセリフで自分を鼓舞し、嫌いな人には相変わらず心の声は辛辣で、そこが人間味が溢れているように感じ憎めないキャラです。そんなヒーローがただ助けたいという気持ちだけで立ち向かった姿に涙が止まりませんでした。そして別れの場面では身分の違いという現実を見せられ、苦しくて胸がいっぱいになってしまいました。その後もまた喜びで胸がいっぱいになってしまったわけですが。これまで誇り高き王女だったヒロインでしたが、ただの女性となったヒロインも何だか可愛かったです。短めのページ数なのに、出てくる事柄がすべて繋がっていて無駄がなく無理がなく、まさにヒーローの人生をかけた物語でした。面白かった!!