濡れて藪蛇
」のレビュー

濡れて藪蛇

タクミユウ

最高です。描き下ろしも良かった😩

ネタバレ
2023年2月20日
このレビューはネタバレを含みます▼ 表題作+短編作品(「そしてダメになる」作品のスピンオフ含)

表題作「濡れて藪蛇」タイトルまで最高でした。警視庁刑事とヤクザの物語。淡々とした物語の様に感じますが、ハッと自分なりに感じた物悲しさと2人が一瞬見せる互いへの情に…良き、と暫く浸りました。

ネタバレですが、理由も言わず退職した父親の後を追う様に同じ道に進んだ赤星刑事。父の葬儀に参列したたった1人の同僚、斉田刑事。彼はかつての父親の様にヤクザと深く関わるなと、赤星刑事を心配しています。
サラッと読むと刑事を抱くヤクザの物語ですが、ホテルの部屋から出る直前、赤星刑事が見せた仙波への情に、仙波は思わず赤星刑事に真実を口にしそうになります。その表情…😩この作品、最高に男同士の物語だなと痺れました。

物語の中にその事実の描写は有りません。読み手が想像し拾う楽しみを、作者は作られたのかなと思いました。なので個人的に想像しますと…赤星刑事の父は、署内の情報をヤクザに流してはいなかったのかなと思いました。その様に仕立て嵌めたのが同僚だった斉田刑事だったのかなと。
誰も来なかった葬儀に斉田刑事は参列し、刑事になった彼を気にかけもした。赤星刑事が真実を知っているのかどうか、気にしていたのでしょうか? そして斉田刑事はどの組のヤクザに情報を流していたのか…。仙波さんじゃないのかな?と思いました。そして視点を仙波に移して読むともう…堪らんです😩

仙波は赤星刑事より年上なのだろうなと思いました。赤星刑事の父の現役時代も知っているのだろうなと思います。署内の情報を斉田刑事からもらい、彼が赤星刑事の父にそれをなすりつけたのも見ていた。(もしかしたら手を貸したかもしれない)そんな父親と赤星刑事の刑事としての性格は似ていたのかなと思います。からかい半分で言ったヤクザ側の情報の対価を自身の身体で払っても良い…、赤星刑事が同意するとは驚いたでしょう。彼の刑事としての葛藤、何も知らないからこそ刑事だった父親への葛藤に…ふらふらになりながらもそれでも淡々と毎日を生きている赤星刑事の姿に、漢としての情を感じた仙波なのかなと思いました。

斉田刑事の件が表だったのは仙波が…と思うのは都合が良いですかね。各々の人生を生きながらも情は重ねていくのかな…。良い作品でした。
いいねしたユーザ4人
レビューをシェアしよう!