彼が眼鏡を外すとき
」のレビュー

彼が眼鏡を外すとき

麻生ミツ晃

恋のほろ苦さと大人への成長を描いた作品✨

2023年2月22日
冒頭の短編2話を枕にし、4年後に描いたスピンオフを表題作にする構成。視点や時系列を操り二組の話を巧みにリンクさせています。「ほんとのところ」「ほんとのほんと」自己表現に難アリで周りと馴染まない転校生 土屋×お兄ちゃん気質の放っておけない一太。不器用さも真っ直ぐさもある17歳の甘酸っぱい恋が眩しい。極度の照れからコミュ症となる土屋だが、一線を超えれば もう… ね。(別の照れが生まれたけれど) 読んでいるこちらが嬉し恥ずかし😄 「彼が眼鏡を外すとき」読み終えて気付かされる冒頭の何気無いシーンの意味。どんな気持ちで眼鏡とネクタイを外すのか、窓に写る自分の姿に何を思うか。立ち止まった足が切ないよ、賢次… 始まりは2年前、一太を想う親友の巴、巴を想う一太の弟 賢次、という肌が触れる距離感での一方通行な恋。それぞれの視点で見る景色が切なくて痛い。好きだからこそ相手の少しの変化に気付き 言葉に過敏に反応してしまう合わせ鏡の様な繊細な2人だが、15歳の真っ直ぐさは迷いが無くて鋭く胸を突く。健気で純粋で必死な捨て身の想いに応えた巴。その袖を一度躊躇い掴む手にその1コマの心理描写に萌えを感じたけれど、その後の話を読むと その手には賢次の見えない不安が潜んでいたのかな…と。 巴は「お前でなきゃ嫌なんだよ」と賢次自身を受け入れたのに、一太へのコンプレックスや自信の無さが耳を塞いでしまったのか。恋人として過ごした年月があっても、身体は急激に成長しても、ゲームセンターでの出来事が胸に残した傷は ずっと心の奥にあったんだろうな。「思ったより似なかったなぁ…」あぁ この一言に胸を抉られました。「好きだ」と言っても「好きか」と確かめない。自分の腕の中に居るのに確信が持てない、聞けない、怖い… かつて巴の心の内を賢次が代弁した様に、今度は賢次の心の内を巴が代弁する。そして欲しかった言葉をかける。「誰より」… この言葉が賢次にとってどれだけの意味を持つのか、どれだけ欲していたかを知っているから。初めて見せる眼鏡姿、そのレンズの内側を濡らす涙は美しく温かい。賢次が一目惚れした巴本来のカッコ良い姿に嬉しくなり、賢次の腕に添える手に、2人並んだ凛とした背中に胸がいっぱいになりました✨ 描き下ろしでは まだ小骨が引っ掛かっている賢次だけれど、これからは眼鏡を掛けてちゃんと見れば気付くはず。自分に向ける巴の表情や視線に込められた熱いものに😊
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