先生、もうダメですっ【電子限定おまけ付き】
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先生、もうダメですっ【電子限定おまけ付き】

嘉島ちあき

面白い、けど もどかしい

ネタバレ
2023年3月2日
このレビューはネタバレを含みます▼ 1巻では悟に人間味がほとんどなくて打てども打てども響かず、もだもだどころかマジでのれんに腕押しレベルで関係が進展しない。とにかく悟が理屈っぽく何でもかんでも言語化して理解するまで受け入れず、会話は成り立つのに話の通じない場面が多い。理屈っぽい=賢いではない。

◇「作家の創作活動のために近い人間(編集や知人)が性的な方法で協力する」っていうありがちファンタジー設定なんだけど、にしてもそんな流れになるか???という現実離れした展開で まずそれを飲み込みきれない。そこに悟の不可解さとロジックの珍妙さが重なる上、肉体 関係を持った"だけ"の二人を応援したい気持ちにもならず、1巻だけでは良さが分かりにくい。私は作家さんへの信頼のみで2巻を買った。

<ここからは感想というより私なりの解釈>
2巻で悟がやっと感情らしいものを見せ始め「"なぜ"人を好きになるのか、"なぜ"その人でなければならいのか」という因果関係の証明に異様にこだわる描写があるが、これは幼少期に愛されなかった体験がトラウマになっているせい。

同じく愛されなかった境遇の兄に恋人ができてしまい、自分だけがこの先ずっと一人で生きていくんだと半ば諦めながらも、心の奥底では孤独に苛まれ「愛されたい、誰か傍にいてほしい」と求めている。

だから本当は"なぜ"ではなく「"どうしたら"好きになってもらえるのか、"どうしたら"傍にいてもらえるのか」を知りたいが、一方では「捨てられるくらいなら最初から深入りしない」と心を閉ざしてこれ以上傷つかないように自分を守っている。(酔うとやけに人懐こくなるあたり、それが現れているように見える)

なので「愛されたいけど愛されたくない」みたいな矛盾を抱えつつ、どうにか「〇〇だから愛される」という確証を得たいけど、結局感情のことを理屈だけで理解しようというのが無理な話なのでこじれにこじれてしまっていた。

─────というのが2巻の中盤でやっっと分かる。
<解釈終わり>

◇その後は悟に共感できるところも見つけられるし、怖がっている悟を真澄が安心させていく過程もいい。でもフリの長さに比べて両思い描写が短いのが残念。(あとなんでそこまで恋愛観拗らせてた人がBLにハマれたの?しかも自分で描くほど?と思っちゃう)

◇だいぶ時間かかったけどハッピーエンドでよかったよ、という気持ちで☆3。
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