3番線のカンパネルラ
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3番線のカンパネルラ

京山あつき

原作ファンにこそ読んでもらいたい

2023年3月9日
初読み作者様。『銀河鉄道の夜』が大好きなので購入。主人公・加納くんが前向きに人生を歩みだすまでを描いています。加納くんは失恋の痛手を拭えないまま無為な日常に疲れているサラリーマンで、ある日カンパネルラ(原作ではカ"ム"パネルラ。表記を変えたのはなんでだろう)とあだ名した高校生君と出会い心を救われる体験をします。このカンパネルラ君の立ち位置が素晴らしく納得しかありませんでした。もう一人重要なのが加納くんが働くお店の店長さん。この人は優しいよういて浅く、悪気なく他人を傷つける発言をうっかりしてしまう人…こういう人いるし、自分もまた誰かにとってはそういう人になっているかも。スゴくリアリティのある人物描写に唸ってしまう。そして加納くんがこの先の道を決める大事な場面で『銀河鉄道の夜』に出てきた蠍の火の神話を用いてくる辺り、原作ファンとしては膝を打ってしまいました。宮沢賢治の思想が色濃く反映された名場面です。エチは見えない構図でさらっとあり、物語の雰囲気を壊さずで良かったです。絵は独特で味があります。
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