トリガー
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トリガー

イシノアヤ

臆病なクズがあざとい天使に救われる

ネタバレ
2023年3月13日
このレビューはネタバレを含みます▼ ●レビュータイトルはちょっと個人的な解釈入ってます…。曽根への仕打ちが痛々しくて、ホント三井クズすぎる…曽根かわいそう…と思う冒頭ですが、読み進めてみるとタイトルのような感想になりました。めちゃくちゃ好きです。
●表題作の三井はほんとクズで、堕落していく様はザマアミロって感じですが、曽根が忍耐強いというか、よくもまぁこんな男を見捨てずに付き合ってあげたものだと。天使か菩薩か。流した涙まで利己的(演技)で、三井マジで救いようないな…と思うのですが、やはり曽根は戻ってくるのです。それが、三井にとっての“トリガー”。嘘のない、弱々しい涙がこぼれる。
●続く『ビューティフル〜』は、三井の少年時代のお話。自分を否定して否定して、“普通”を歩もうとしてきた三井ができあがるまで。このエピソードが入ることで見え方がガラリと変わる。
●『サニー』ぐちゃぐちゃになって逃げ出しそうになる三井を、はんぺんひとつで引き戻してくれる曽根。陽だまりのような温かい人。
●描き下ろし。これがまた素晴らしくて…。三井が曽根によって完全に解放されるまで、あとほんの少し。『ビューティフル〜』を経てこのエピソードを読むと、ああ確かに…と。それを見抜ける曽根は、そこそこの経験値を持っていて(作者さんのあとがきにもそうある)、表題作の菩薩のような彼にも、実はあざとさが混ざっていたんじゃないのかな…?などと考えてしまいます。
●大変良かったです。初めて拝読する作者さんでしたが、他作品も読んでみたくなりました。
●(追記です)明記するのは野暮かな…と思ったのですが、苦手な方のために。描き下ろしで、リバもしくは攻受逆転を予期させる描写があります。(直接描写はありません。)私はそこが“素晴らしい”と思ったのですが…いかがでしょうか。
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