阿修羅の契 愛蔵版
」のレビュー

阿修羅の契 愛蔵版

大竹直子

どっぷり戦国時代に浸れます…完璧な世界

ネタバレ
2023年3月25日
このレビューはネタバレを含みます▼ 大竹直子先生が描く戦国時代、宇喜多直家の物語。髪型、着物、足袋などの小物類に至るまで本当に美しく、その時代を感じ、史実に基づいていながら大竹先生の物語がとても良かったです。
あらすじにありましたが、当初は長期連載予定だったものが、休刊などの諸事情で読み切りになったとの事。形が変わったプロットを一つにまとめたのがこの愛蔵版だと思われます。

「阿修羅の泪」直家の小姓、岡 清三郎の物語。(美男だったそうです。)ですが時代は戦国。下克上、身内、家臣同士の裏切り等、ハピエンという優しさはありません。直家お気に入りの小姓(10代前半)の清三郎に、美少年好きと名高い・穝所 元常(さいしょ もとつね)の暗殺を直家が命じます。それは直家が望んだものではない…家臣達の清三郎への妬みから…という描き方、直家の含んだ物言いがハラハラでした。

ネタバレですが、穝所 元常と清三郎の血の関係。それを知っていたのは直家だけ。清三郎の母は直家の異母妹。その清三郎を直家はどんな気持ちで抱いていたのか…。清三郎は戻って来ると1人信じる直家。「御実検を…」の清三郎のシーンは魅了されました。(凄かった。)「泪」は直家から見た清三郎の涙を意味しているのでしょうか…。見つめ合う2人の最終コマに、大竹先生が描く衆道の至高の関係性とはこの様なものなのかと思いました。

「兇星」〜眠り狐〜、宇喜多 直家 誕生の物語。宇喜多家再興をと、阿呆のふりをしていた幼少期、主君 浦上 宗景(うらかみ むねかげ)に小姓入りし、その後元服までの物語。眠り狐から岡山県吉備の九尾の狐伝説を感じた直家の冷たい美しさ。大竹先生の絵が最高でした。(宗景と直家の物語は外伝に描かれています😩…直家受!)

最後、「寵童」〜直家と清三郎の出会い〜。直家の思考する表情が鋭く、なのにゾクっとする程美しい(直家!)。後に、そんな完璧な彼の唯一の弱点となる清三郎。それ程の人物だと納得するのは冒頭「阿修羅の泪」を読んだから。

女性には絶対に触れられない世界、衆道の美しさ。その関係性。(もちろん美しくなく残酷な面も沢山あったでしょう。)だからか女子が想像してしまう性を超えた関係性は耽美で、儚く、永遠性という匂いも感じて酔ってしまうんだと思います。清三郎が討死にした数ヶ月後に岡山城で病死した直家、最期まで美しい2人でした。
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