第一倉庫にて
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第一倉庫にて

冬辺

麗しき5つの短編集

2023年3月26日
およそ平積みには出来ない挑発的なサインの表紙。ポーズをとる少年の美しさは快楽によって花開いたものと知る。表題作「第一倉庫にて」ある少年に届いた差出人不明の呼び出しメール。不審に思いつつ行ってみると制服姿にガスマスクという何ともトリッキーな人物が。そして 逃げる間も無く薄暗い倉庫内で… 少年の性に対する好奇心をカレンダーに記された×印の数と表情の変化で推し測る。快楽に呑まれた君は細身だけど桃尻なのね💕 思い当たる人物はクラスの中に3人、その内の誰か。思わせぶりな視線・台詞・アイテムを散りばめて、きっとこの人物 それならば… からの思わぬ幕引き。抱き締める左手に傷は無い、そして君は喉を鳴らすのか… 続く「第一倉庫より」何となく この2人が拗らせた想いを彼に向けているのかと思っていたけれど… 一方通行な想いのベクトルと複雑な感情が起こさせた快楽の罠。そして それを冷静に、見晴らしの良いポジションから眺めていた人物。用意周到な事… 身バレしてはイケナイものね。前作を読み返すと言葉の裏側や視線の意味に気付かされて、きっとこの人物の拗れた感情が起点となって始まったんだろうな と。蜜に群がる男が一人 また一人、前後からの二輪挿し… 4人で快楽の壺に堕ちるのか。「夢子になりたい」美しい男女の双子、夢二はどうしても夢子になりたい。瞳の中に映る夢子に。意地悪したくなる気持ちも分かるけど、表紙の夢二の手に滲む 胸の内の苦しみを解いてあげてよ、佑…「男娼の恋」娼館には夜毎色んな客が来て、その求めに応じて顔を使い分ける男娼たち。鈴の想い人はその中の一人 秋介だが、何故か抱こうとはせず… あぁ これはとても健気で愛のあるお話。その裏でひっそりと胸に仕舞う想いもあるけれど。最後の挿し絵、対象的な2人の背中よ…「果てしない青」物悲しく仄暗い継承。部屋の飾りの賑やかさと「あの人」に懐く幼子達… 残酷な現実とのギャップが際立ち、やるせない気持ちに。長男として壁となる背中には強さと悲しみと諦めが… 扉の向こう側、そこには自由か 新たな主か。果てしない青、見られたらいいな…「あゆみ」停学を食らった問題児のDKと白磁の陶器の様な美しいお坊さん。乱れた白衣姿で煙を燻らせる姿が色っぽい。明るく爽やかなお話でした。点描による心理描写が効果的で、ぼかしや見えない構図、生々しさを感じさせない美麗な線も素敵でした。耽美な世界に浸りたい方は是非✨
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