このレビューはネタバレを含みます▼
好みのイケメンがいる訳でもなく、きゅんとするストーリーと言う事でもない。知り合って10年、同棲中同性カップルの、日常の中で起きた、非日常だった特別な日の話。本編90P、この作品の素敵さを、上手く語る文章力が無いのが悲しいところ。塗装工のハルと、年上薬剤師チカ。まず、始まりの朝食のシーンがすごく好き。男二人、インスタント味噌汁と、納豆、頂き物のおかずを食べる。作ったのは、炊いたご飯だけ。それで心を掴まれました。どちらかが料理が得意とかなくて、オシャレな朝食が準備されてるでもなくて、簡素だけど気持ちの手抜きが無い朝食。今までたくさんの食事シーンを見たけれど、これが一番かなと思います。等身大の男二人、飾らないけれど、しっかり愛情で結ばれてる感が、たまらない。そんな二人が、将来的な事を考えた時に、突きつけられた現実。現状は法律の不備だと思えるし、読者としては切なさも感じられる二人の選択、でも、二人が本当に喜んで幸せそうで。それが伝染して、こちらも幸福な気持ちになります。ハルもチカも、生育過程ははっきり言って恵まれない環境です。なのに、どちらも、後ろ向きでなく、誰のせいにもせず、真っ直ぐに生きているのが、清々しい。同性カップルには現実的なストーリーですが、リアリティが良いというのではなく、ハルとチカが応援したくなるカップルで、それが良い。読後が心地よい作品です。描き下ろしもありますが、本編だけでも満足です。レビュー数は少ないですが、ほとんど☆5です。目立つ作品ではないですが、素敵な作品です。