セシルの場合は…!?
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セシルの場合は…!?

忠津陽子

後続の漫画家に恐らくとてつもない影響

2023年4月2日
何処かで見たように感じるのは、忠津先生が大抵先駆者で、アイディアと工夫の詰まった全盛時代に築かれたこうした多くの作品群という財産ゆえ。 面白いストーリーとキャッチーな絵や、ちょっとコミカルでクスリとさせられる言動に苦笑もしたりしながら、楽しく読めて漫画のなかで冒険心もお転婆も、擬似体験出来る。当時は画期的な存在だったはず。少女漫画界に起こした影響が巨大過ぎて、典型的少女漫画に今や収まりきったイメージだが、第一人者だった。その力が、此処で絵柄的に安定的になっている、と思える。
ただ、これの前に読んだ「満月城へようこそ」(同時収録3作)のほうのが、枠をはみ出す奇想天外(新鮮さ)を放ったろう。

「セシルの場合は」60頁。男嫌いは生まれつきではなかった。
「恋は風まかせ」72頁。まさに風まかせなストーリー展開。
「ビバ!死神さん」51頁。主役は? そこに、巧みさ光る。
総じて女子は言動が優等生キャラとばかりに行かないのも、なかなか意表を突いている。
発想力で楽しませてくれて、線と目が忠津先生のスタイルで少女漫画の主流に居て、服がお人形みたいにかわいらしい。どこに進んでいくのか予感させない部分は相変わらず強いけれど、破天荒な部分で読み手をブンブン振り回しつつも物語に引き込む力は、多少封じられたようには見えてしまった。頁の長さを得られた分、まとまり、というか、収束感を示さざるを得ず、併せて勢いをも削がれ、その事が拡大均衡の構成力の持ち味に響いたと感じた。
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