このレビューはネタバレを含みます▼
11日まで1巻が無料という事で読ませて頂きました。「王様の耳」というタイトルやロバ耳のマスターの美しさが素敵で、読んでみたいなと思いました。
誰にも言えない秘密と言うのは、人生が長くなる程少なからずあるものかなと思います。最初はふむふむと読んでいましたが、最後はうんうんと共感しながら読んでいた自分に不思議な感覚を覚えました。
共感したお話は、女子アナの滝口さんですかね。彼女の様な方と私も交流があったなと。数年の交流でしたが、名前や本人に関する事…どこどこに住んでいる、と本人から伝えられた情報は全て「嘘なのよ、」と。本人から滝口さんの様な笑顔で仰って。「名前も偽名なのよ、」と。
滝口さんとどこか似ていて美しい方で、悪い人でもなく。ただどこまでが本当で、どこからが嘘だったのか…。楽しく過ごせた彼女との時間は今思い返したら不思議ですが、このエピソードを読んで彼女自身が何かを守る為に作っていた嘘だったのかな?と思いました。
だからかマスターが苦手だと言うのも、分かるなと。(人というのは本当に不思議。)
あと、病院へのマスターの秘密買取り出張のお話。このエピソードは祖母を思い出しました。
孫の私には戦時中の話は何もしませんでしたが、長男以外全てを失った祖母の苦労や精神的苦しみは、最期、病院を巡る日常生活で、死というものをとても恐れていました。それは戦禍の中で体験した、死の残酷な側面を知っていたからだったのかなと。作中の老人の様に、言葉にする事の出来ない何かが祖母にもあったのかなと。あの時私がもう少し大人で知恵があったなら、臨床心理士かカウンセラーをそれとなく巡る病院の中のリストに入れられたのになと。
この作品の秘密というのは、誰もが持っている蓋をした人の熟成した感情なのですかね。そんな風に思ったら、このマスターの”秘密”は何だろうなと。1巻を読了して、この物語に言葉に出来ない魅力を感じました。
今すぐ続きを読みたくなる様な終わり方ではないので、この雰囲気をまた味わいたいなと思った夜、ゆっくりとした時に次の巻を読みたいなと。大人な作品です。