冬の星座
」のレビュー

冬の星座

夏嵐/山藍紫姫子

男性がどれだけ残酷な生物なのかよく分かる

ネタバレ
2023年5月29日
このレビューはネタバレを含みます▼ 小説「冬の星座」のコミカライズ作品。
山藍先生の作品を知ったのは10代でしたが、大人過ぎて物語の何がどんな状況😩なのかついていけず、作者が作品に込めたものなんて想像すら出来ませんでした。ウン10年経った今、コミカライズならと再読。とても面白く、深い作品でした。

もしある場所で自分以外の全員が男性だったら。自身の隣にサラリーマンや作業服。他人同士だから最初は気にもしませんが、自分以外の全員が男性だと気付いた瞬間、緊張します。それが隣のサラリーマンに伝わり、その人もここに女性が1人いると気付いて、それを男だけだと思っていた場に女性がいると全員が認識したら…その瞬間個々だった認識が男性に変わる(男性の残酷性にスイッチが入ったというか)。女性が感じるそんな男性の本能的な怖さ。そんな怖さをたっぷり描いたのが、この作品なのかなと思いました(言葉が難しい)。そしてそれは女性だから描ける世界観なのかなと。もし男性が描いたら怖さより残虐性にシフトして、田亀先生の様な作品になるのかなと。(男が描いた男の怖さに、BLの様な耽美さをまだ見た事がないなと)

主人公、美しい青年アイシスに劣等感を抱いていたカルロス。そこから沸くアイシスへの執着心、支配欲。個人の尊厳は尊重されず、その財力と権力でアイシスの男性器を女性器に変え胸だけはそのままという残虐さ。TLかと錯覚してしまう漫画ですが、アイシスは男性なんですね、それも神学校を卒業した。

彼の背徳感や絶望感はどれ程のものだろうと想像しながら読むとまた深く、自 殺する選択もだから無く、自問自答するアイシスの姿は修行の様で。そこにキャサリンという女性はカルロスのパートナーで、彼の子を妊娠する。漫画だと淡々と物語は進みますが、キャサリンがアイシスに謝りながら妊娠を告げるシーンは俯瞰すると深く、貴方の性器は偽物だとそんなアイシスへの嫉妬心も含まれたシーンなのかなと。そんな彼女はやっぱりカルロスからの愛を感じられず…不安だから泣いてしまうのかなと。そんな彼女に私は男性だよ、と言うアイシス。ハッとしたキャサリンのコマは作者らしい良さでした。

男がひた隠す残酷性をアイシスを使って見せてくれたのかな、カルロス。アイシスの感情は最後、聖母的な慈悲もあって良かった。都合の良いスパダリ優しさなんか何も無いこの作品、穿かされたアイシスの赤いヒールが良かったです。
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