復讐の子守唄
」のレビュー

復讐の子守唄

百鬼夜行

無料1巻分だけ

2023年6月8日
安い復讐劇だった。心優しく分別のある母親からの教えである「順番を守らなければいけないことはたった一つ。親より先に逝くことだけ」との教えを重視せず、大切にもせず、碌でもないオッサンの仕打ちに激怒し、一時の感情に流されて、自らの生命を、自らの意思で断ち切った娘。自死してこれ観よがしに見せつけることがオッサンに対する復讐のつもりなのか、老後、孤独に取り残される母親に自らの絶望感を伝える全力の演出手法のつもりなのかは知らないが、娘の自死を選ぶという身勝手で独り善がりな判断がすべての悲劇の始まりという物語。生前にクソ男を見極める目を養ってこなかった自らの落ち度を認めず、自分を悲劇のヒロインに仕立て上げて、本当に大切にしなければならない大切な人である母親の存在を軽視し、無視するかのように蔑ろにして、自らの感情に溺れ、ラクになることを選択した娘。この女性にはまったく共感に値する要素もなければ一切の同情の余地も沸き起こらない。人間は生きていれば、思い通りにならないことも、ツラいことも、苦しいことも、悲しいことも目の前に現れるのは当然のこと。それが人生だし、生きているという証明の一つなのだから当然のこと。自死を選んだ娘と同じくらいに身勝手で自己チューのクソ野郎に執着して筋違いの復讐劇をするであろう老婆にも共感できないし同情する気にもならないから1巻だけでお腹いっぱい。現実の人生の方がもっと複雑で刺激的でツラいことも苦しいことも嬉しいことも楽しいことも生き甲斐も多い。安易すぎる創作劇には食指が湧かない。
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