7SEEDS
」のレビュー

7SEEDS

田村由美

感情移入が危険⚠

2013年7月14日
・・・って思うくらい、追い込まれた人間のむき出しの姿・心の連続です。
読んでいて辛くて目を背けたくなるシーンもありました。

「なぜ?」
「どうしてこんな事を?」
「何で刻は巻き戻せないの?」

作中はその連続です。

散りばめられている謎も簡単に推測できるようなものではありません。
絡まった糸を爪先で解くように焦れったくも、ドラマティックに明らかにされていきます。

胸が締め付けられるような『命の危険』と『人との信頼関係崩壊』の連続。
これ以上ないだろう、という絶望的な出来事の後に、さらにひどい事が続きます。
創りものなのに「もうやめてっ」、「もう物語としても収集つかなくなるよっ」、・・・と思うレベルです。

でも、無用の心配でした。
全員ではないけれど(←このあたりがリアル)登場人物達が『生よりも大切な事』を見出すまでを描ききります。「もうこんなに最低人間、どう足掻いたって・・・」、と諦めたくなるような人まで、です。

この作品の凄さは、壮大なストーリー展開よりも丁寧な人生描写の方だと個人的に思います。
登場人物がどうしてそんな事をするまでに至ったのか、という『成り立ちの過程』を、必要なら人生の最初から最後までを丁寧に描写して読み手に伝えています。
だからこそ、その人物の身の上を知り、不可解な言動の意味を理解し、涙できるのだと思います。

私は作中に登場する漫才師達が、心にとり憑いたように残って離れません。
感動し、シンクロしたように切なさをおぼえ、泣きました。

登場人物はとても多く、様々な性格・立場の人がいます。
きっと皆さんがシンクロできる人物がいるはずです。
いいねしたユーザ3人
レビューをシェアしよう!