墨と雪
」のレビュー

墨と雪

かわい有美子/円陣闇丸

黒澤の黒澤による黒澤のための物語

ネタバレ
2023年6月18日
このレビューはネタバレを含みます▼ シーモア島で教えてもらった作品。シリーズもので、本作だけ読んでも大丈夫だけれど、「甘い水」から読んだほうがわかりやすいということも教えてもらっていたのだが、なんとなく攻めと受けのキャラの雰囲気にひかれて本作から読んだ。それでも教えてもらっていたとおり本作だけでも十分楽しめた。
とにかく黒澤(攻め)がよかった。この人には★10をつけたい。「眠り姫」とか、いつもの私ならちょっと引いてしまいそうな気障なセリフも、この人が言うとまあなんかいいかなと思える。終わりのクリスマスら辺の話とか、キザといえばキザで、なんだかむずがゆくなるんで、いいかっこしいが苦手な方にはおすすめしないが、私はこのむずがゆさが心地よかった。セリフがにくい。黒澤に会えてよかった、ありがとうな気持ちになれて、それだけでも読んでよかったと思えた。
ストーリーとしては、篠口(受け)がほんとひどい目にあうし、私は痛いシーン苦手なのであまり見たくはないのだが、本作に関しては骨おられたりとかするシーンはたしかに痛そうではあったが目を背けなければならないほど真に迫った描写はされていないように思った。篠口が拉致されて、救出されてといった展開は特に引き込まれるほどのことはなかったが、篠口という繊細な人間が、黒澤という包容力のある年上の恋人に救われ癒やされていく様子は、自分の中の、何かにたよってもたれかかって甘えたい欲求を刺激され、読んでてうっとりした。甘やかされたい願望のある人におすすめしたい作品だと思ったけど、甘やかしたい願望のある人がこれ読んだらどう思うんだろう。
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