オレとあたしと新世界【単話】
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オレとあたしと新世界【単話】

古宇田エン

拗らせるにもほどがある

ネタバレ
2023年6月18日
このレビューはネタバレを含みます▼ 数年ぶりにどうなっているか購入してはみたものの、二人の環境が変わっても相変わらず肝心の核心部分にはお互いに触れないようにしている展開が延々続いている様子。しのぶのマコトに対する想いはブレていないが、マコトはしのぶと東條の間をフラフラし続け、その気配はしのぶを傷付けている。最初は東條さんを「東條さん」と呼んでいたはずが、パニック発作の辺りから東條さんではなく、「圭吾さん」と呼んでもいる。「別れました」のではなかったのか?二人の様子を見るにマコトと東條との関係は切れずに続いているようにしか思えない。わざわざバーに現れた東條がしのぶに「むごい仕打ちだ」「不誠実だ」と言い放ったが、「不誠実」で「むごい仕打ち」をしているのは誰か。自分たちがしたことは棚上げ?しのぶに本当に他に「いい人が現れたら」、マコトはどうするつもりだったのか、東條に泣きついて元サヤ?それを安易に想像できる程度には何かにつけてマコトのが東條を思い浮かべる展開が多い。事故前は確かに魅力的に見えたマコトのその魅力が、そのせいで半減した感が否めない。誠実にマコトを思い遣るしのぶに対し、常に自分のことで頭がいっぱいで、事あるごとになぜか東條を思い出すマコト。そもそもしのぶのプロポーズを2回断っているのに、「結婚相手を探している」「パートナーになってくれないか」と言った東條とは、交際期間が3ヶ月ほどにも関わらず同棲にまで至っているのはなぜなのか…あまりにしのぶが不憫。話の展開するテンポも気になる。ひたすら不穏な空気が流れ続けるのも疲れるし、ここまで来てもいつまでたっても、マコトに何かあれば東條が現れてマコトを甘やかしそれを察したしのぶが傷付く、その繰り返し。マコトのトラウマと辛さ()にばかり焦点が向けられ、好きで眠っていたわけではないのに10年という長い長い時間を失い、恋人を自分の担当の理学療法士に寝取られてその本心も見えなくなり、それを飲み込み一人耐えているしのぶの辛さがあまりに軽く扱われているようで悲しい。天秤がマコトに傾きすぎているように思う。残り何話なのかわからないが、事故以来逆境に立たされたままでなおも傷付き続けるしのぶこそが報われてほしい。また、いつまでも関係を匂わせ続けるマコトと東條の関係にはっきりと線を引いてもらいたい。そして何よりしのぶのためにマコトを成長させてもらいたい。
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