ヴィヨンの妻
」のレビュー

ヴィヨンの妻

太宰治

心の変化をよく捉えている

ネタバレ
2023年6月23日
このレビューはネタバレを含みます▼ 交錯する二つの心理が自然な流れで描かれていて、印象に残る小説だといえます。はじめは夫の借金を返すために店で働く妻の姿が哀れに感じられましたが、次第に妻自身にも心に変化が生じているところをみると、不幸な境遇の中にも、どこかに幸せは存在しているということを認識させられます。また最後の新聞を発端とする一件については、周囲からの評価を気にしない大谷自身のある種の「無常感」に近い考え方が感じられ、同じ物事でも捉え方は人によって違いがみられるということを知りました。全体的にとても深い心理描写がされています。
いいねしたユーザ1人
レビューをシェアしよう!