このレビューはネタバレを含みます▼
人と死が身近で、幸せの意味も愛さえあればの今と異なり、まだまだ身分が隔たりとなっていた、切ない時代の恋話。この手の昔話は、いかにその時代のリアルを読み手に伝えられるかが、盛り上がりの一つであります。こちらの作品は、時折現代的な表現が描写されていますが、それがかえって他のシーンに出てくる、明治のリアルを引き立てています。切ない格差恋愛に、時代と命のやるせなさが追い打ちをかけていて、中々切ない仕上がりになっています。ただ、後味は悪くありませんから、読後感はとても良い。つくづく、自分は幸せな時代に生まれたと、改めて考えさせられる作品です。