間の楔
」のレビュー

間の楔

吉原理恵子

原点にして至高、そして基準となった作品✨

ネタバレ
2023年7月14日
このレビューはネタバレを含みます▼ 初めて読んだBL。最初がこの作品ではなかったら、それ以降もうBLは読まなかったかも。それほど衝撃的でした。その後、無意識のうちにこの作品を基準にして他作品を評価する癖がつきましたが、私の中でこの作品を超えるものはまだありません。舞台は近未来。絶対的ヒエラルキーの最上位に属するアンドロイドのイアソンが、面白半分に最下層に属する「雑種」の人間リキを無理矢理ペットとして飼い始めます。リキは「雑種」のプライドにかけてペット扱いから逃れようとしますが、イアソンは次第にリキを本気で愛するようになり絶対に手放せないと自覚するに至り、元々無理があった2人の関係はゆっくりと悲劇へ向かって舵を切り始めます。この両極端の世界に住む2人のカリスマが各々のプライドをぶつけ合う一方で、お互い以外は考えられないほど狂おしく求め合うという愛憎入り混じる関係が、息詰まるような筆致で描かれます。このドラマをより引き立てるのが、その壮大にして緻密な世界観。社会体制、乗り物、建物、街並み、今でいうIT機器、外交、経済、法律etc.に至るまで触れられます。こういうのが退屈、苦手な方もおられるでしょうが、背景が現実的でしっかり書き込まれているからこそ、イアソンとリキの絶望的な関係がより明確になるわけで、この点こそがこの作品の価値を大きく底上げしています。そして、2人のセ◯クスの描写の濃厚で官能的なことといったら❗ダイレクトな視覚よりよほどエロティックで、フルボディの赤ワインのように強い余韻を残します。初出から40年近く経っていますが古さは感じません。その間、アニメ(OVA)にもなったし、英語やスペイン語にも翻訳されて現在も海外のファンが増えています。私はyoutubeのおすすめに上がってきたサントラに惹かれそこからアニメ、小説と逆流しました。入りやすい所から入り、このBLの古典的名作に触れてみてはいかがでしょうか。興味のある方にとっては一読の価値ある作品だと思います
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