ハジメテだけどカメラの前で【コミックス版】
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ハジメテだけどカメラの前で【コミックス版】

百瀬あん

ストーリーや設定よりエロ重視。犯罪的。

ネタバレ
2023年8月3日
このレビューはネタバレを含みます▼ 犯罪・エゴの押し付けを愛だの恋だの好きだので有耶無耶にして美化した作品だけど絵が綺麗だからエグく見えない。

AV業界の話なだけあって性描写はたくさんあるので、エロ重視のBLを読みたい時にいいと思います◎

私は免罪符が強すぎる作品が苦手なので、本作はあんまり好きになれませんでした。具体的には以下の通り。

◇自己犠牲的で流されやすく自分がどれだけ人権無視されてるか理解してないノンケ(皐)、独占欲・支配欲・性欲を皐に押し付けて自分勝手な振る舞いをする男優2名(須藤、大河)、キャリアのために平気で他人の尊厳を踏み躙って特にお咎めもないAV監督(植木)、そいつらに不当な扱いを受けてる皐を助けないどころか茶化して笑ってるだけの男友達(立花)。全員頭おかしい。

◇2巻で須藤の過去が語られ、つらい思いをしてきたんだ、事情があるんだ、みたいな雰囲気になってたけど普通に自業自得。嵌められた時に無実を親や先生に信じてもらえなかったのは普段の行いが招いた結果だし、AV業界に縛られることになったのも暴力に走ったせい。むしろそんな経緯があって嫌な思いをしてきたならなぜ皐を嵌めたんだ……と逆に反感が湧いて全く同情できない。しかもデジタルタトゥーが一生残るような嵌め方をしてるのがダメ押し。

◇大河も誠実ぶってるけど結局自分のエゴ最優先で皐を騙して苦しめるし、監督も自己中心的で悪い意味のサイコパス。そしてその監督のヤバい行いを誰も咎めない。なぜなら苦しむ被害者は皐だけで他の人たちはむしろおこぼれにあずかってるから。

◇お人好しで100%被害者に見える皐も実は結構おかしい。大河にも監督にも甘すぎるし、皐の意思ガン無視で独占欲だけは一丁前の須藤のことは何があっても許しちゃう。須藤さんのお陰で……みたいなこと言ってるけど元凶そいつだよ〜!

◇フィクションにクズが出てくるのも犯罪が出てくるのも全然いいんだけど、相応の罰も受けず償いもせずハイ終わり〜丸くおさまりました〜って感じにしたいなら現代とは倫理観の違う世界の話にするとか、身分差があって平等に扱われなくても不自然じゃないとか、そういう何かしら説得力のある設定がほしい。現代日本のままで犯罪が捻りもなく軽んじられてるのは都合良すぎて冷めるなーと思う。
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